じいそぶがるてん

じいそぶがるてん

設計:中村大補+橋爪賢一

20.03.05

じいそぶがるてん


白馬でペンションを営んでいたご実家で育ったオーナーは、しっかりとそのDNAを受け継ぎ軽井沢で民泊を営む決心をしました。

それに最適な土地をとうとう見つけました。
私もそこを訪れたとたん、独特な地形に沿った、そこにふさわしい建築のかたちがしっかりと見えました。ランドスケープデザインと一体化した在り方です。


そこで金澤愛の植生調査。
ツルニンジン(ジイソブ)、オオバギボウシ、ナルコユリ、コバギボウシ、ナンテンハギ、キバナアキギリ、オトギリソウ、ヒヨドリバナ、オトコエシ、ノガリヤス、アキノキリンソウ・・・・、
さすがその筋のつわもの、どっさりと種採りして帰ってきました。

ジイソブとはまた面白い名前の野草です。爺のそばかすという意味ですが花にそばかすはありません。近似種のバアソブ(婆そぶ)はそばかすのある花。夫婦なんですね。

ワクワクしてきました。


中村@PDO

20.03.14

プレゼンテーション ―見えた姿―

家族をこれから増やしていこうという若いご夫妻。
最初のご相談から約1年後のプレゼンテーションです。
コスト枠と要望している設計要件にはどうやら隔たりがあります。
目指す夢は大きく、豊かでなければいけません。
まずは、私が敷地に立って見えた建築像を
絵にしてみることにしました。

コテージと住居、その狭間の半外空間のカフェ。
うねる地面と水平線を強調した庇ライン。
その前景となる色とりどりの野草の森。

時間をかけて育てていきましょう。

中村@PDO

20.04.20

無限の可能性 ―敷地で考える―


広大で起伏に富んだ敷地にコテージと住居をどう計画していくか。
連続する環境を読み取り、新たな風景を生み出していく。
まさにランドスケープデザインです。

敷地をくまなく歩きながら、それぞれに感じたことを共有していきます。
オーナーもロープで建物の位置や大きさを検証したり、
スケッチもしながら様々な可能性を探っていました。

長い時間敷地で過ごし、大きなところで方向性が見えてきました。
ここにあるべき佇まい、道路からの見え方、建物までのアプローチ、非日常を演出する様々な仕掛け。
これらを計画案に落とし込み、再度敷地で検証します。

橋爪@PDO

20.08.26

場の魅力を引き出す ―配置検討―


植生調査を行ったのが今年の3月。
長かった梅雨も明けて多くの植物が育っています。

この豊かな植生とこれから建つ建築とが
お互いに魅力を引き出し合うような関係でなくてはいけません。
敷地をくまなく歩きながら、ここでの過ごし方をリアルにイメージしていきます。

一方で起伏に富んだ地形を把握するため高低測量も行いました。
図面とパースで当たりを付け、現地に縄を張り確認です。

共通のテーマを持った建築が集まることで生まれる一体感。
ここでしか体験できない滞在型の施設を目指します。

橋爪@PDO

21.02.09

再び現場へ ー配置確認ー



春に着工を控え、できあがった模型を手に現場で打合せです。
住居・コテージの各部屋からの眺めを確認して、建物配置の微調整を行いました。


場所を移して見積もり提示と図面の打合せ。
当初予算をだいぶオーバーしており、あらかじめ準備したVE案を説明しながら方針検討です。
近隣挨拶も済ませ、着工にむけた協働作業が続きます。

細田@PDO

21.05.12

伐採工事 ―新しい風景―


5月に入り、軽井沢も過ごしやすくなってきました。

ご自宅とコテージ、それぞれの計画内容がまとまりいよいよ工事スタートです。

まずは伐採から始めます。
必要最低限と思いながらも2棟分は範囲も広く、多くの樹木を倒しました。
成長に何十年とかかってきたのに対し、重機で倒す時はあっけない程一瞬です。

PDOは建物だけでなく、植栽計画も合わせて考えます。
新しい風景づくりのスタートでもあります。

橋爪@PDO

21.06.05

土地のお清め ー工事の安全願ってー


確認許可も下りて現地でご家族にお越しいただき土地のお清めを行いました。
最初のご相談から2年ちょっと経ちましたがいよいよ工事のスタートです。
東京から移住され、来年早々には軽井沢での新しい生活がはじまります。

細田@PDO

21.06.16

基礎配筋 ―浅間石がゴロゴロ―


地盤の強度は調査をするまで分かりませんが、
軽井沢では西へ行くほど安定している印象があります。
重機で地面を掘るたびに大小様々な浅間石が出てきました。
視覚的にも強固で安心感のある地盤です。

基礎の鉄筋が組み上がったところで仕上がりの確認です。
第三者機関の検査を受けた後、数回に分けてコンクリートを流していきます。

橋爪@PDO

21.07.07

祝・上棟! ー自宅とコテージー



梅雨空の中、今週無事に上棟しました。
住宅棟とコテージ棟、息の合った総勢10名の大工衆の手で順番に建て方が行なわれました。


軽井沢の夏の工事休止期間まであと僅か。天候を見ながら安全第一に木工事を進めていきます。

細田@PDO

21.07.16

大工工事進行中 ―2チーム体制―


建て方では10人の大工が入り、4日がかりの大仕事となりました。
少し落ち着いた今もチームを二手に分け、
住居とコテージ同時並行で進めています。


納まりの話をしながら、棟梁がささっと図面を描きます。
自身も作業をしながら、2棟を行ったり来たり。
現場を1つにまとめてくれています。

橋爪@PDO

21.07.22

サッシ取り付け ―工事自粛期間へ―



7月25日から8月31日まで軽井沢の工事自粛期間となります。
保養地としての軽井沢を快適に過ごせるよう、町を挙げての取り組みです。
そのため現場作業もしばらくお休みとなります。

玄関ドアやサッシもほぼ取りつきました。
しっかり養生をして夏が過ぎるのを待ちます。

橋爪@PDO

21.09.15

断熱工事 ―快適な住環境のために―



現場は大工と電気屋が二手に分かれ勢い良く進んでいます。
サッシが入ったところで室内から発泡ウレタンを吹き付けます。
吹き付けの良い点は複雑な形状であっても隙間なく施工でき厚みも自由に指定できることや
木材の乾燥収縮に追従し高気密を保つことができる点です。

快適な住環境のために大切な工事です。

橋爪@PDO

21.09.23

木工事進行中 ―連続性のある外観―



現場は大工が外回りを、電気屋が内部の配線作業を進めています。

外壁はガルバリウム鋼板と杉板のツートンです。
杉板がほぼ張り終わり、道路から引いて見ても木の優しい表情が分かるようになりました。
住宅とコテージの連続性も強くなり、施設として統一感があります。

天候にも恵まれ、順調に進んでいます。

橋爪@PDO

21.10.23

見えない仕事 ―付け梁―


写真はコテージに泊まるお客様のためのラウンジスペースです。
森に開いた大きな窓から景色を楽しむことができます。
天井に等間隔に張られた板は意匠的なもので、建築用語で「付け梁」といいます。



施工は簡単に考えれば天井に石膏ボードを張った後、
付け梁を下からビスで固定し、木栓でビスを隠せば良いのですが、
「それでは大工ではない」と、先に付け梁を天井裏からビスで打ち、
木栓が下から見えないよう施工してくれました。
石膏ボードを差し込む溝を突くなどスペースのない中で丁寧な仕事です。

大工のこだわりと配慮を見た場面でした。

橋爪@PDO

21.11.13

森の中の佇まい ー住居棟ー



足場がばらされ、住居棟が姿を現しました。アプローチ側を低く抑えて、奥に伸びやかに広がる片流れ屋根と下屋の構成になります。紅葉の森を背景にとてもよい佇まいです。

細田@PDO

21.12.14

木工事完了 ―非日常空間へ―


2棟同時進行で進めていた木工事もいよいよ終わりを迎え、
仕上げ工事へとバトンタッチしていきます。



この段階で空間の形ははっきりと見えています。
窓から見える景色は非日常そのもの。
グリーンシーズンは森との一体感も味わえることでしょう。

コテージ棟のコンセプトは観光地として「行く軽井沢」ではなく、
別荘地として「滞在する軽井沢」を楽しむ施設です。
都会の喧騒を離れ、家族や友人と過ごす時間を楽しんでいただく。
空間体験も提供できる価値の1つです。
オーナーのアイディアや配慮に溢れた設えも加わり、施設として完成となります。

橋爪@PDO

22.02.04

工事終盤 ―心地良い居場所を繋ぐ―


住居棟がほぼ完成し、コテージ棟も追って工事を進めています。
内装やタイルが仕上がりそれぞれの部屋の特徴が見えてきました。
日当たりの良いLDKは外の景色を大きく取り込みます。


リビングはステップで2段下がり、
ヌックの様に包み込まれるような空間です。
造作のベンチは収納にもなっています。


キッチンはデザイン性とメンテナンス性を兼ね備えたオールステンレス。
宙に浮いて見えるのもまた演出です。
カウンターを作り家族や友人で料理を楽しめます。


吹き抜けに飛び出すようにあるのが書斎コーナーです。
複数の居場所を作りたいというオーナーの想いから出来たスペースでもあります。

立体的に空間を使い、非日常を感じるシーンが盛り沢山です。
最後の仕上げは外構や庭の計画。
オープンに向けて準備を進めていきます。

橋爪@PDO

22.03.03

竣工写真 ―街並みへ―


PDOに問合せいただいたのがが2018年の2月。
事業が絡むプロジェクトということもあり設計に多くの時間をかけました。
丸4年を経ていよいよお引き渡しです。

コテージはファミリー層や3~6人のグループが主なターゲットです。
非日常を感じながら過ごしてほしいというオーナーの想いが詰まっています。
建物完成のタイミングで一区切りとなる写真撮影を行いました。


静かに建築と向き合えるのは今日が最後でしょう。
軽井沢の街並みに溶け込み、春以降は賑やかな姿を見せてくれることと思います。

橋爪@PDO