進行中の仕事のブログや建築実績などをじっくり読み込んでいただき土地探しの段階でお問合せいただくことも多くなりました。
ランドスケープデザインや建築の視点で候補地についての所感をお伝えしています。
敷地や周辺環境の特性(良い点・悪い点)、建築手法やデザインでカバーできること、
全体予算のことも睨みながらすでにある植生や土地が潜在的にもつ力の生かし方などもアドバイスさせていただいています。
家づくりという土地購入も含めたプロジェクトの中で「お金の流れをデザイン」すること。
あるべき姿を共に描きながら対話を重ねていくプロセス。
PDOが大事にしていることです。
滋賀出張の帰りにたねやグループのラコリーナ近江八幡を訪れました。
今回が2度目、2年ぶりです。
イタリア語の「丘」という意味をもつラコリーナ。
八幡山から連なる丘が広がっています。
藤森先生が手がけるラコリーナは大きな意味での環境と応答しながら進化を遂げています。
“実り豊かな森の中で人と自然を繋げる”というコンセプト、
「食」と「建築」という分野の違いはあれどオーケストラPDOの目指すところでもあります。
「建築」が生まれる土壌に何を見ているか。
人の関係性をどう捉えているのか。
伏流水や季節の風など風景をつくる見えない要素があり、
人と人を結びつける「流れ」、時に分断もさせる「流れ」はそこには存在します。
土地と住まい手家族に流れているものを感じること。
家づくりはここからはじまっています。
「パッシヴデザイン」の奥深さ。
オーケストラのメンバーのセッションは2018年も続きます。
その土地の周辺環境の中でもとりわけ良いビューポイントを見つけましょう。
①気持ちのよい「抜け」のあるポイント、方向をさがす。
・美しい林、深い森、森と森のすき間の空
・そのエリアのシンボリックな山を見通すポイント
赤岳、甲斐駒ヶ岳、浅間山…など
・美しく手入れされた近隣地の庭、空地を見通すポイント
その気持ちよいポイントこそが皆さんの家の中の特等席になるのです。
そこはくつろぎのソファであったり、キッチンシンクの前であったりします。逆に生活インテリア空間に取り入れたくないものも探しましょう。
②見たくない物体を見通す方向
・アスファルトの道路
道路が見えるということは車が走り抜けるのが見えるということです。
・隣地の物置や家、玄関ドア、窓など
隣家の生活の気配というのはとても気になるものです。
それらのポイントが全くない、という土地はないと思います。
次のステップ、家づくりの間取りに活かしていきましょう。
良いビューは大胆に取り入れ、望ましくないものは徹底的に隠す、ということです。
日本では手付かずの森(原生の森)はブナが主体の広葉樹の森か、
タブやシイが主体の照葉樹の森に大別出来ます。
しかしながら、そのような森はもはやほんの一部にしか存在しません。
なぜなら、人が健康に暮らすためには原生の森はあまりに暗すぎるからです。
土地に自生している植物は多くの情報源です。
きれいな土におおわれていて雑草すらなかったり、
樹の根元が土でおおわれ露出していなかったりしていたら、
土地本来の地面に何らかの理由で他から土を運び入れたことを意味します。
① 雑草だらけ。
一年草なのか多年草なのかが重要です。基本的に木がまったくない土地は要注意です。
また、雑草でもある特定の範囲が違う種類が繁茂していたら、
そこは古い住居の撤去あとであったりします。
② 地面や樹の根元がコケで被われている。
霧が発生しやすいエリアであったり、流れ込む水の影響で地面付近が湿潤状態であることを意味します。
③ クルミ林
クルミは水が大好きで寿命の短い木です。敷地に一本でもあれば要注意です。
列をなして自生していたらほぼ間違いなくその下には水脈があります。
巨木となるミズキ、ハルニレ、ケヤキなどは同様に豊富な地下水を好みますが、
クルミが自生するエリアと同居はしません。
伏流水の多い敷地は設計上の配慮が欠かせません。
④ 赤松、植林唐松、白樺
伏流水は少なく乾燥していますが、土地に養分が少なく皆伐採後の二次林です。
寿命が短く60年生あたりが限度で立ち枯れします。
また、最近は松枯葉病が範囲を拡げてきており若くても枯れていきます。
立ち枯れした木は倒れ家屋を損壊させますので建築に際し伐採が必要です。
⑦コナラ、カエデ、クリ、ケヤキなどの高木からマユミ、ヤマボウシ、ツリバナなどの中木
土地に養分が多いので皆伐採後の二次林であるが、豊かな植生です。
建築に際し最小限の伐採にとどめましょう。
⑤ ブナ、ミズナラ、ダケカンバ、コメツガなどの高木からタモ、ヤマボウシ、カエデなどの中木、アセビ、ニシキギ、ツヅジなどの低木あり。
潜在植生の貴重な森です。一千年をかけて育まれた森です。
こうした森に家を建てるのはやめましょう。
建築に際しいくら木を大切にしたくても建物に近接して木を残すと後々困ったことになりますので注意が必要です。
幹が屋根を覆うようになることが予想される樹は残念ですが原則として伐るべきです。
それでも折り合いをつけて同棲する場合もあるでしょう。
写真は「欅3兄弟の家」です。
どんなに配慮しても建築行為で樹の健康は損ねます。取り戻すには
それなりの年月が必要となります。
自然環境豊かなエリアではたとえ平坦に見えても地面は傾斜していることが普通です。
また、小刻みに起伏のある地面もあります。
傾斜にはそれぞれに理由があるので探ってみましょう。
浅間山山塊や八ヶ岳連嶺など大きな山の麓は穏やかに傾斜しています。
特に南斜面は古くから人が居住しています。
山林であれば必ず傾斜しています。
平坦であれば田畑の跡か湿地や池だったかもしれません。
あらかじめ傾斜角度を知っておくことは大切なことです。
角度30度以上の斜面が高さ2mを超えて続く場合、
法律上「がけ」という定義にはまり建築に際して大きな制約を課せられます。
また、敷地自体は平坦でも、隣接して「がけ」がある場合も同様に制限を受けます。
良く注意してください。
小刻みに傾斜がある凸凹の敷地は2通りの理由が考えられます。
一つは大きな岩が土の下に点在、または列をなして存在する場合です。
基礎工事でその処理に多くの費用がかかります。
もう一つは過去に表流する水の流れがあった場合です。
今は無くてもその下は地下水脈(伏流水)となっている場合や
豪雨などで水が流れることもあるかもしれないので注意です。