ギャラリー・間で開催中の
「o+h展:生きた全体―A Living Whole」を見てきました。
建築家のメッセージの中に以下の一文がありました。
「建築を含む『生きた全体』を考える時、私たちは、建築を自然から離れた人工物というよりは、
生き物としてとらえるところから始めてみたいと思います」
有機的な造形から建築に息づかいを感じ、
人々を惹きつける魅力となっていくのかもしれません。
スタディ模型の数々、、、人間の脳内に迷い込んだかの様です。
1つの建築が出来上がるまで様々な葛藤や想いがあり、
過去のプロジェクトとも絡み合って思考が渦巻いている、
そんな混沌とした状態が表現されているように感じました。
建築の着想はどこから得られるのか。
恐らく建築家それぞれにアプローチが違い、
同じ景色を見ても感じ方が違うように、様々な視点や深度があるのだと思います。
そういった人との違いもまた面白いところです。
バイオミミクリ(生物模倣)という言葉があります。
自然界や生物の仕組みから学び、新たな製品や仕組みをつくる考え方です。
身近な例として、カワセミの鋭いくちばしを模した新幹線の先頭部分や、
蓮の葉の構造から考案されたヨーグルトの蓋などが挙げられます。
建築もまた自然から多くの学びを得ています。
私たちが無意識レベルで心地良いと感じるものには普遍的な要素が見え隠れしており、
PDOが多様な自然環境の中で挑み、大切にしてきたデザインの核の部分と共通するものがあります。
情報豊かで様々なことが多様化している現代だからこそ、
そぎ落とすことで見えてくる本質的な豊かさを提案したい。
それは決して大きな家ではなく、原型となる住まいです。
そんな想いからMimicry Styleプロジェクトを立ち上げました。
ロゴマークは葉っぱに擬態したコノハズクです。
森環境と同化しながらも快適な暮らしを実現する家です。
大自然には気が遠くなるような時間をかけてつくりあげてきたかたちがあります。流れているものとその流域の地形で変化していくものですが、そこには一定のルールや物理法則が存在しています。
自然と向き合いながら日々建築に携わる中で、その原点と言える型のようなものの存在を確かに感じています。のちの設計図となるようなDNAを見える化していくことが求められています。厳選されたプロトタイプとして世の中に発信していくことが家づくりの羅針盤にもなり得ると考えるのです。
最小にして最大を得る方法を見つけ出す。
様々なものを身にまとい過ぎて、膨らんでしまったもの。一旦削ぎ落として、そのあるべきデザインの原型を示し、住まい手と共有していくことで、設計プロセスのあるべき道筋をつくっていくことができるのではないか。
本来の自然の中での暮らし、環境との応答が心地よく感じられる源をしっかりと伝えていくことがPDOのこれからの役割でもあります。土地が内包している記憶、住まい手の想い、そこにPDOのDNAが加わって、様々な建築実績が生まれています。
PDOの家ではありませんが、中村が17年前に設計した軽井沢の別荘です。ご縁があり取得された2代目のオーナーからデッキ増築等の相談があり、打ち合わせに行きました。
いろいろ手入れをされながら過ごしてきたことが感じられる建物で、17年経ったとは思えないよい状態でした。
ここ数年、いろいろなご事情から次のオーナーに引き継がれていく建物がいくつかあります。少し寂しい思いもありますが、大切に使われてきた建物が代替わりしたり、新たなオーナーの手に渡って住み継がれていくことは建築家冥利に尽きると思います。