家族の暮らしやそこで過ごされる人たちを包み込みながら時に解放する建築。
唯一無二の建築は、敷地に立つことからその物語が始まっています。
未来のあるべき姿を予見する1枚の設計図。
たくさんの力が結集され、スケッチは形へと立ちあがっていきます。
自然の環境、家族、向こう三軒両隣の隣人たち、地域社会。
見えない境界線を越えて応答していくデザインが、住まい手と共に関係性を育んでいくのだと感じています。
こーちゃんに会いに、鹿谷へ。
引き渡しから3ヶ月がたちました。ラグを敷き、当初はソファーを置く計画もありましたが、現在はこんな様子です。
「あまり物は置きたくない」
暮らしの中で大事にしたいこと、この空間であらためて確認されているようです。
窓から見える鹿谷のカラマツ林、その中に点在する広葉樹の若木たち。
内と外との繋がりと住まい手家族が想いが、心地よい居場所をつくりあげているようです。
うずまきスタジオの野草の葉。優れた撥水性をもっています。進化の過程で獲得してきたデザイン(かたち)です。
水玉が転がり落ちる時、表面についたゴミを一緒に取り込んで流し落とす「自浄作用」の機能を持ち、光合成効率を上げることに一役買っていると言われています。
顕微鏡で見た時の葉の表面形状に、その秘密があるのですが、ここにデザイナーの意図は存在しません。
住宅、別荘、保養所、研修施設、etc・・・ 人が介在する建築であること。
ここに、そのプロセスの中で建築家やデザイナーが果たすべき役割が示唆されていると感じています。
美鈴の家は唐松の木々に囲まれています。同じ別荘地内では広葉樹を主体とした多様性のある植生の土地もあります。
このエリアはおそらく開発計画で、人の手により唐松の植林が行われ、唐松がその勢力を広げてきたのでしょう。
自然に沿う暮らしの中で、本来の植生に近づけたいと感じはじめたオーナー。
増えすぎた敷地内の唐松を切り林床に光と風を入れることを考えて、地域で暮らす伐採のプロに重機を使わない仕事を依頼したのです。
久しぶりに訪れた美鈴の家。光が適度に入る敷地となり、広葉樹の幼樹や野草たちが元気に育ちはじめています。
都会の暑さを逃れ、チャム・クリス・ライナー・ジルが気持ちよさそうに駆けまわる姿が目に浮かびます。
細田@PDO
※潜在植生とは、時間の流れに沿って環境が植生を規定し、環境がさらに植生を変えてゆくという、環境と植生との相互作用の結果進行する遷移とは無関係に、いま人間の影響がすべて停止されたときに、その立地が支え得る自然植生のことで、現実には存在しない理論上の植生概念である。(宮脇昭『植物と人間』より抜粋。ラインホルト・チュクセンが提唱)