アスプルンド設計の「森の墓地」は1940年の建築作品です。
日本で言うところの斎場、セレモニーホールです。
葬儀で集まった親戚、新旧の友人たちの微妙な距離感は今も昔も変わらないのでしょう。
待合ホールに置かれる椅子をデザインしたのもアスプルンドです。
この4人掛けの椅子が直線ではなくへの字に曲がっている理由は、
この建築家の人への愛情の深さを物語っています。
横並びではあまりによそよそしく、かといってL字ほど親密でもない、
への字型が関係性からしてよいバランスだということです。
大自然のなかにおける人の家でも、
人と自然との関係性、距離感を大切にしたいと思います。
その解がへの字型プランです。
森、動物、水流と建築がなじむあり方は、
PDOが追い求めるデザインです。
標高1100m八ヶ岳南麓に住んでいる。
ここ数十年程度の設計、施工技術の向上で
快適な生活が可能となった。
直近の都会である甲府には時々は降りることもある。
その道すがらよく目にするのは、
空を気持ちよく滑るグライダーの姿。
動力装置を持たずに気流をとらえて操縦する。
3,000m級の峰が連なる八ヶ岳は南北軸だ。
その東も西も谷状となっている。
東谷は塩川、千曲川、信濃川となり日本海に抜ける。
西谷は釜無川、諏訪湖、そうフォッサマグナだ。
やはり日本海まで抜ける大地溝帯。
大陸からの風はこの谷地形で加速度を増す。
この二つの風が八ヶ岳東西谷を吹き抜け、
ちょうど合体するポイントが韮崎と双葉だ。
これが俗に言う八ヶ岳颪(おろし)。
甲府盆地の冬を寒いものとしている。
航空協会、航空学園がある理由もそれだ。
小淵沢の人に「名物は何?」と聞くと「風」と答えた。
特に春先には北西からの吹き上げで
芝も剥がすと言う。
清里には風を鎮める「風の三郎」と言う社が今もある。
長い棒の先に鎌を掲げた「風切り鎌」も風習として残る。
地形的にこれら風の影響を受けない八ヶ岳南麓エリアは
居住地として人気がある。
中村@PDO