「分水嶺にたつ家」のオーナーは、ご主人が動物医療生態、奥様が植物生態を専攻しているという最強のご夫妻です。「ブナの親樹を見つけた・・・」そうさりげなく情報がもたらされたのはつい最近のことでした。敷地周辺にブナの若木は発見していましたから、そう遠くないところに親樹があると予想はたてていたのです。
21年前に私が八ヶ岳に移住してから、まず初めにやったことは、潜在植生の森を見つけることでした。学術的に八ヶ岳南麓は「ブナ、ウラジロを主体とした混交林」と言うことになっているにもかかわらず、どこにもブナが無いことに疑問を持っていました。
先の大戦での燃料確保で伐採された?小海線蒸気機関の火の粉が原因の大規模山火事で焼失?そもそも建築材としては無用の樹(?)なので皆伐された?理由はよくわかっていませんがブナは一見現存していないのです。それでも急峻な谷あい地形では残存の可能性ありと踏んで、21年前に単独で調査した経緯があります。
今回発見されたブナの森はそんな単独調査で「ブナ確認されず」と判断されたエリアでした。なんて恥ずかしいこと。私の目は節穴だったということです。しかも、私の自宅から徒歩圏!
目通りの直径で1メートルはあろうかと思われる、ブナは幹にボコボコといくつものこぶがあり、樹齢数百年はありそうです。形成に一千年かかるといわれるブナの森。この森の植生調査には時間がかかっても、やりとおす価値があると思います。
空にひらく三枚屋根の家の石積み工事の様子です。
浅間石の大きさはオーナーとイメージを共有し、やや小ぶりなものを選びました。石と石が隙間なく噛み合い、とても丁寧な仕事です。
今のままでも充分素晴らしい仕上がりですが、いずれ苔に覆われ、より風景に馴染んでいくことでしょう。