白樺湖の西の、よく手入れされた英ガーデン。その入口のあたりにとてもよい具合にゴールデンアカシアがある。遠景の中にも映え、良い目印にもなっている。
なぜか皆これを真似る。いつの間にか植木屋さんの人気樹種になった。河川堤防保護のため植えるニセアカシアと同様、旺盛な繁殖で根を張り巡らせるのだ。短期間のうちに大地を被う。在来種はひとたまりもない。
あろうことか湖畔にゴールデンアカシアを大量に植えて「黄金アカシアの森」などといって客寄せしているから腰を抜かした。やってよいことと悪いことがある。大変なことになる。
今や毎日の様に多く生物種が絶滅していく。かの恐竜が隕石の衝突で絶滅したときもほとんどの哺乳類は生き延びたという。そんな大絶滅の何倍もの勢いでこの100年足らずの間に、絶滅がつづいている。地球の生命は全てが平衡バランスをたもって成り立っている。何かが絶滅すれば連鎖して大量繁殖し、何かがまた絶滅する。人が生存する条件が危機に瀕している。人自身が招いていることだ。
なにはともあれ、この高原ではめっきりカタツムリを見なくなった。なにが起こっているのか?
各方面にエキスパートなメンバーが参集しPDOを結成、ロゴマークについても時間をかけて散々検討していました。そして内定していたデザインがありました。自然の創り出す神秘のうずまき、オウムガイをモチーフにしたデザインです。意匠登録の段取りにも入っていました。
ところが思いがけない大災害。3・11です。首都高速のバスの中でこの瞬間に遭遇した私は、6時間以上も足止めされたバスの中で、津波が街を飲み込む瞬間、漁船がうずまきに巻き込まれて旋回する・・・、千葉のコンビナートが炎上している様子など、停電のないバス内のモニターでライブ映像で観ていたのです。
おそらくは一生忘れることのない恐怖。
そして、オウムガイのデザインを見た瞬間、その恐怖がよみがえってくるのでした。そして廃案になりました。
時を経て、このロゴマークを復活させようと思い至りました。それも図面にはどんなときも必ずある、方位のシンボルとしてよみがえりました!
高原にもうひとつの家を持つために土地探しをしていたオーナー家族。娘さんは、この敷地に立ったとき思わず「リフジオボーボー!」と叫んだそうです。ドイツ語で「草ボーボーだなこりゃー!」という意味でしょうか。起伏のおおい傾斜地に美しい樹がそこかしこに。旺盛な生命感に満ちた土地でした。そんなわけでこの家の名前は「リフジオボーボー」。
完成して4年。すっかりご無沙汰していました。ちょっとした相談事があり4年ぶりの訪問です。時を経てますます土地になじんでいます。
娘さんも息子さんも揃ってドイツ留学してしまい、今ではご夫妻だけで高原の生活です。
梅雨明け前までにはその冬の薪は割り終えなくてはいけません。ところが往々にして力尽きるのです。それが問題です。
この冬の薪はほとんどが唐松と赤松。ナラなどの広葉樹は手に入りにくくなっています。もっとも、成長に時間がかかり、より潜在の森に近いナラやクヌギを薪にする事は、奨励できないことです。とはいえ、唐松赤松は敬遠したいのが本音。どうしてか?割ってみて下さい。そして燃やしてみて下さい。すぐ分かります。
まず、玉切りはむしろ楽です。でも目がよれているので、また節だらけなのでスカンッ!とは割れないのです。大概の人は途中で断念するでしょう。秘密で教えましょう!背割りをしておくのです。直径の3分の1は深さが必要です。そうしておけばあら不思議!スカンッ!と割れるんです。
そして、燃やして下さい。・・・・すぐ燃え尽きます。置き火にならないのです。だから火が落ちてしまわないように、しょっちゅうくべなければいけません。薪のストックは広葉樹の場合の2割り増しで考えておかないと、寂しい早春を迎えることになります。
それでも今年もやはり力尽きてしまいました。少し不足しているのは分かってるんですが・・・・・。
庭のデザインをよくします。花をめでる木。幹立ちを楽しむ木。紅葉を楽しむ木。適材適所に配し、空間を創ります。水が引き込めればなお良いです。木たちが人の生活と対話するように仕組みます。
ただ、よくある「ガーデンデザイナー」ではありません。もともとある森との連続した流れにデザインするのがPDO流の家森づくりです。創るというよりも「再生」に近いかもしれません。
でも、人はせいぜい建ててから30年、住まいは百年ももたず土に還ります。木は樹となって何百年もそこで長生きをつづけます。ですから、PDOは育てたミズナラやハル楡の苗をそっと片隅に植えておくのです。百年後にはここが大昔のように潜在の森にもどり、多くの生き物が笑っている事を夢みて。