2014.05.02

甲子園ホテル

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芦屋出張にかこつけて甲子園ホテルにも行ってまいりました。
  
甲子園ホテルはFLライトの愛弟子、遠藤新が30歳代前半の若さで、林愛作プロデュースにより設計監理した、85年前の建築です。東の帝国ホテル、西の甲子園ホテルと言われました。
  
帝国ホテルはライトが腕を振いすぎました。工期、コスト度外視でとうとう完成を待たずアメリカにお引き取り願った、というのが真相のようです。かたやこの甲子園ホテルでは、弟子の遠藤新はさすが日本人。きちんと工期、コストをコントロールしたようです。建築表現はライト直伝です。
  
率直な私のこの建築の感想を言わせていただきます。
  
表現としてはライトのミッドウエイガーデンに通じるマヤやアンコールワット遺跡からヒントを得た、いわゆるプリミティヴ主義です。ですが、左右対称に厳格にこだわり、
軍艦を思わせる重い表現は、とても保守的で堅い印象を与えます。ライトがするような軽やかでしなやかな表現には至っていないと思います。また、この環境でなければ存在し得ないという、計画の土着性に欠けると思います。
  
決められた工期、コストを忠実に守ったと言われていますので、遠藤新としては真に自由にやりたいことができたというわけではなかったでしょう。
  
あまり生意気なことをこれ以上申すのはやめます。
  
特注の装飾タイルをたったの一枚の切物なく納まっているのは驚異的です。よほど優秀な工事管理者が徹底してタイル割、逆算した躯体の施工図をおこしたのでしょう。日本人の仕事の細かさ、誠実さは今も昔も世界一です。ライトの建築にはない緻密さがこの建築にはあります。
  
それはどちらかというと細かなことを気にしない、アメリカ人のライトと、日本人遠藤新の国民性の違いなのかもしれません。
  
それにしてもこれほど見事な建築が、国の重要文化財に指定されていないということがどうしても理解できません。