ヘムロックヒル・・・栂の丘、そう名づけた家が出来たのは、今からもう20年も前のことだ。都会をはなれ大好きな八ヶ岳の自然の中で暮らしたかった。
設計図は当時事務所を開いていた東京で描いた。毎週の様に山歩きで八ヶ岳に通っているというのに、いざ住まいを設計しようとしたとき、風土についてほとんど知識がないことに気づいた。
冬の風、夏の風はどちらから吹く?
日照時間は?
どんな植生?
土の成分は?
地下水の流れはどこからどこへ?
・・・・形を出してしまう前に多くの勉強をした。
こう見えても東京時代の私は、ビルや狭小住宅の設計に明け暮れた。そんな中、自邸の設計は自分を取り戻すためになくてはならない時間だったのだ。